2020年8月2日、20時。ほぼ西の空に緑色にぼわっと光る姿を見た。光量は低く肉眼では捉えることはできない。ネオワイズ彗星を双眼鏡で見つけた。『ガンダム』に多少興味がある方なら、サイコフレームのような光だと言えば伝わりやすいかもしれない。 見えていた時間はわずかだった。
長く続いた雨の期間に、彗星は地球から離れつつあった。私がネオワイズ彗星の接近を知ったのは、天文カメラマンのツイートだった。7月の半ばくらいである。SNS上では、映画、『君の名は。』のポスターのようだという声もあった。興味を引かれたが、休日の少ないシフト月だったこともあってか、仕事が終わると急速に気力が消えていった。長い雨でバイクに乗れないこともマイナス要因だったろう。
7月の終わりあたりに、二日ほど雨のない日があったので、とりあえず観測に出てみた。両日とも雲が厚かった。切れ間に探してみたが徒労に終わる。それでも次に飛来するのは、5000年後だと知って、できることならこの目でとらえたいという思いが強くなった。
8月2日は勤務日だった。この日痛烈に自覚したことがある。いつの間にやら正解ばかり求めて仕事していることに気づいた。正しい仕事の手順、正しい動き方……、どれも他人基準。もうたくさんだ。合理的とはなんだろう。そういう疑問が電気が走るみたいに脳裏に浮かんだ。
その夜はちょっと信じられないくらいに晴れ渡った。月が昇り、その付近に木星と土星が見えた。ネオワイズの情報を取る過程で、二つの惑星が見ごろになることも知った。私のエントリーモデルの双眼鏡でも、かすかに土星の輪が確認できた。木星の赤い模様も然り。月は南に出ている。北西から西の空に目を転じた。観測中にSNSでもを探す。圧倒的に、〈見えなかった5000年後に生まれ変わってまた会おう〉というような話が目立つ。
かみのけ座の中に彗星はいるだろうという情報が複数あった。かみのけ座を検索する。画像を確認すると大きなクラゲのような姿である。宇宙にその星座を探すと、ほぼ真西に浮かんでいた。
〈かみのけまではきたぞ〉
かみのけ座のおおきな囲いの中に集中した。すると緑のにじみのようなかすかな光が見つかった。もう、尾を引くほうきの部分はなくなっているが確かにネオワイズ彗星である。ネオワイズ彗星の遠ざかる後ろ姿である。すでに5000年の旅路に就いていた。それでもその背中を見ることができた。
別れゆく姿に、とても偉大な王を思った。
fushikianさんの文面は、
やっぱり小説みたいでステキですね(^ ^)
夏本番で、これからツーリングも
楽しめると良いですねー!
ありがとうございます。気軽に遠出する気分にはなれませんが、基本バイクに乗りっぱなしスタイルならよさそうですね。ひたすら人が集まらない場所を探す旅というのもいいかもしれないな。
ホントに小説のような文面で引き込まれました。5000年に一度と知って、思わず画像を拡大してみました!今日は誕生日なんです(笑)
自ら発信する事はハードルが高くて出来なかったけど、こうしてたまたま目にした記事に素敵な出会いがあり、コメントが出来た事に感謝です。ありがとうございます。
cocoさん、はじめまして。コメントありがとうございます。画像はネオワイズ彗星ではありません。申し訳ないですm(_ _)m ネオワイズは双眼鏡でわずかな時間しか見られませんでした。でもこの写真、月の右上に木星が写っています。拡大すると明るい天体が出てきますのでそれが木星です。改めてHappy Birthday!
ありがとうございます。
改めて、はじめましてm(__)m
木星みえました!すごい!
拡大しないとみえないし、教えてもらわないとみえないし、素敵ですね。
ありがとうございました。